歯の移植
(自家歯牙移植)

笑顔女性

自家歯牙移植とは

治療では残すことができず、やむをえず抜歯になってしまう場合、親知らずや非機能歯(咬み合わせに関与していない歯など)を移植する方法です。自家歯牙移植は自分の不要な歯を利用するため、インプラントと比較してメリットの多い治療法であるといえます。当院では欠損部に対してインプラントがベストという考えではなく、まずは天然の歯を大切にし、できるだけ自分の歯を活かした治療に取り組んでいます。

当院の自家歯牙移植の特徴

Point01.歯根膜を最大限に活用した究極の治療法です

歯ート

歯牙移植の最大の特徴は歯根に存在している歯根膜が活かされる点にあります。

歯根膜は約0.2〜0.3mmほどの厚みがあり、歯根の表面に付着しています。歯根膜は歯と歯を支える骨(歯槽骨)に介在する重要な組織で、これがなければ歯は口の中に存在することはできない極めて重要な組織です。この歯根膜には主に5つの機能があります。

  • 支持機能:歯を支える機能
  • 感覚機能:歯にかかる力を感じる機能
  • 再生機能:ダメージを受けた歯根膜が回復する機能
  • 栄養機能:歯根膜の周囲に栄養を届ける機能
  • 恒常性維持機能:主に歯が移動する際に関連する機能

この中で「感覚機能」は力を感じるセンサーの役割を持っています。食物を食べた際に、硬いものや柔らかいものを感じること、つまり咬みごたえを感じることができるのは歯根膜があるからで、人工歯根であるインプラントにはない機能です。歯の数が少なくなった際に、逆にこの機能を活かして歯に負担がかからない程度の力で咬むトレーニングを行うことで、歯の寿命を伸ばすことができます。

「再生機能」は歯周病になった歯が改善する際に活かされる機能です。歯の移植は一旦抜歯を行うため、歯根膜には一定のダメージを受けます。移植直後、歯がぐらぐらしているのが約1ヶ月ぐらいで顎の骨の中で定着してくるのはこの機能があるおかげです。

「恒常性維持機能」は、例えば矯正治療において発揮される機能です。矯正治療により一定の方向に歯に力が加わると、歯根に接する圧迫された側の顎の骨は吸収し、一方で牽引(歯根と顎の骨が引き剥がされる)側には空いたスペースに骨が添加されます。このように圧迫と牽引が繰り返されることで歯が動いていきますが、歯根と顎の骨の間にある歯根膜は、圧迫側でも牽引側でも変わらずに一定の幅を保っています。歯根膜にはこのような恒常性を有しているため、歯の移動ができるのです。

このように天然歯の持つ歯根膜には様々な優れた機能があるため、我々は患者さんに天然歯の大切さをお伝えするとともに、できるだけ天然歯を活用した歯科臨床に取り組んでいきたいと考えております。

Point02.豊富な症例数と様々な知見に基づく治療

CT

自家歯牙移植は歯科治療の中でも難易度が極めて高い治療の一つで、さまざまな知識やテクニックを要します。当院では、治療精度を高めるために、歯科用CTを導入しています。歯の移植治療においては、移植する歯や顎の骨の立体的な形態を把握しておくことが大切で、これにより適用できるケースなのかを診断し、安全に治療を行うことが可能になります。これまで日本における歯牙移植の大家である下地勲先生(東京都開業:しもじ歯科クリニック)に師事し、多くの症例を経験してきました。また様々な学会や勉強会等で歯牙移植に関連する内容の発表や講演を行っております。歯牙移植は大変優れた治療法ではありますが、適用が困難な症例もあり、お口の状態によってはインプラントの方が良い場合もございます。当院では、インプラント治療などの様々な治療法と比較し、自家歯牙移植の有効性が上回る症例において治療を行っております。

自家歯牙移植とインプラントの違い

歯を失った場合、一般的にはインプラントやブリッジ、入れ歯といった治療で歯の機能を補います。しかし、それ以外に、ご自身の歯を用いて失った歯を補う治療が「自家歯牙移植」です。自分の歯を活用するため、インプラントにはない様々なメリットもあります。

自家歯牙移植 インプラント
埋め込む歯 自分の歯(親知らずなど) 人工歯根(チタン製)
歯根膜 一緒に移植する なし
治療方法
(外科的な侵襲)
抜歯した自分の歯を、別の場所に移植する 製の人工歯根を埋め込む(小〜大)
歯根吸収 あり なし
感覚機能 あり なし
再生機能 あり なし
恒常性維持機能 あり(動く) なし(動かない)
軟組織(歯肉)との付着 歯根膜があり、適合しやすい なし(天然歯と比べて感染に弱い)
治療費用 自費(症例によっては保険適用) 自費

自家歯牙移植のメリット・デメリット

  • Merit

    • 歯への刺激を伝える「歯根膜」があるのでため、食事の際に噛みごたえや歯ざわりを感じやすくなります。
    • 歯牙移植した歯も矯正治療で動かせる。
      (インプラント治療した歯は矯正治療で動かせません)
    • 他の歯と連結(つなぐ)して修復することができる
  • Demerit

    • 適用できる症例が限られる。
    • 他の歯と同じようにむし歯リスクがある。
    • 歯根吸収(歯根が自然に溶けて骨に置き換わってしまう)を起こす場合がある。

自家歯牙移植の症例紹介

自家歯牙移植

  • 治療前

    Before

  • 治療後

    After

症状 咬むと痛い
年齢・性別 50代・女性
治療期間 約1年
治療方法 自家歯牙移植
費用 約35万円(1歯の移植・2歯の補綴費用込み)
メリット 移植歯のため、手前の歯と連結して被せることができる

デメリット・注意点 移植歯に歯根吸収が起こる場合がある
詳しく見る
料金表
Qどのような場合に自家歯牙移植を検討しますか?
抜歯予定部位に隣在歯がなく、咬合を維持したいとき、インプラントを避けたい若年者など。親知らずなどの不要な歯(非機能歯)があることが前提になります。
Qどのような歯が移植に適していますか?(移植歯の条件)
根が単根で、親知らずなどの非機能歯が最適ですが、条件次第で他の歯も利用できます。
Q移植できる場所(歯を抜いた穴など)には条件がありますか?
抜歯窩や形成窩が歯根形態と合致し、感染がないことが重要です。
Q親知らず以外でも移植に使えますか?
不要な前歯・小臼歯・大臼歯など、条件次第で移植歯として使用できます。
Q子供でも自家歯牙移植は可能ですか?年齢制限はありますか?
成長期(12〜18歳)は骨再生力が高く成功率が良好です。
Qインプラントやブリッジ、義歯と比べて、自家歯牙移植のメリットは何ですか?
歯根膜が残るため生理的動揺が保たれ、骨吸収を防ぎ矯正移動も可能です。
Q自家歯牙移植のデメリットやリスクは何ですか?
吸収・再癒着、失活の可能性があり、成功率は約80%前後です。
Q治療の成功率はどのくらいですか?
条件良好で80〜90%。移植歯の歯根膜が健全であることが重要です。
Q移植した歯はどれくらいもちますか?
当院では20年近く機能しているケースもあります。歯周管理が良好なら20年以上機能した報告があります。
Q治療にかかる期間はどのくらいですか?
手術1回、固定2〜4週、根管治療を含め4〜6 か月が目安です。
Q自家歯牙移植の一般的な治療の流れを教えてください。
診査→供給歯抜歯→抜歯窩形成→即時移植→固定→根管治療→補綴。
Q治療中に痛みはありますか?麻酔はしますか?
局所麻酔下で行い、術後は鎮痛薬でコントロール可能です。
Q治療後の痛みや腫れはどのくらい続きますか?
2〜3日でピーク、1週間で軽快します。
Q移植した歯は、術後すぐに食事ができますか?/dt>
固定期間中は軟食を推奨します。
Q移植した歯の見た目はどうなりますか?
天然歯なので補綴後は周囲と調和します。
Q自家歯牙移植は保険が適用されますか?費用はどのくらいかかりますか?
条件を満たせば保険適用(約1〜3万円)ですが、自費の場合もあります。
Q移植ができない、または難しいケースはありますか?
糖尿病コントロール不良・重度歯周病・移植歯/受容部形態不一致などが挙げられます。
Q移植後に矯正治療はできますか?
歯根膜が生きていれば矯正移動が可能です。
Q移植した歯も、むし歯や歯周病になりますか?
天然歯と同様にリスクがありますので定期メンテナンスが必須です。
Q移植後のメインテナンスや定期検診は必要ですか?
3〜6 か月ごとの歯周管理とX線チェックを行います。
pagetop