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    ラバーダム防湿法って何?

    ラバーダム防湿という言葉はご存知でしょうか?当院に通院されている患者さんで根管治療(歯の根の治療)を受けられた方は既にご存知かと思います。ラバーダム防湿法の歴史は古く、約150年前にニューヨーク州の開業医Barnumによって考案されたそうです。治療する歯にゴム製(非ラテッックスのものもあります。)のマスクを装着し、主に根管治療(歯の根の治療)や詰め物などの修復治療で使用されます。

    初めて装着される方は歯が締め付けられる感じがあったり、お口にマスクをするため、口を開けるのが少し疲れる感じがあるかもしれません。
    しかし特に治療の成功率にも大きく左右されるほど大切な事前処置になります。

    ラバーダム防湿はなぜ大切なのでしょう? むし歯菌が歯の神経まで進行し、歯髄炎という状態になると、感染してしまった神経を取り除くために根管治療(抜髄処置といいます。)が必要になります。治療では歯の根の中をきれいにする治療を行いますが、お口の中は常に湿潤状態にあり、唾液中には沢山の細菌が存在しています。ラバーダムを使用することで、これらのリスクを排除し、歯科医師は術野に集中して治療を行うことができます。またマイクロスコープを併用することにより、根管内を細部まで見ることができ、治療スピードも上げることができます。

    ラバーダムを使用せずに歯の両脇に綿をはさめる簡易的な防湿では、お口の中の細菌が根管内に入り込む危険があります。例えば医科の手術の際に、ガウンをかけず術野を明示しないまま手術を受けるようなものです。また、ラバーダム防湿には、治療時に使う器具や薬剤がお口の中に入らないよう、安全面においても大切な役割があります。

    このようにラバーダム防湿には様々な利点がありますが、残念ながら日本でこの処置を行っているDrは少ないのが現状です。これは現在、日本の保険治療ではラバーダム防湿法に点数に組み込まれておらず、医院側の持ち出しになること、また手間がかかる側面もあるからだと報告されています。
    ちなみに日本の根管治療の費用は他の先進国と比較してかなり低く抑えられており、例えばアメリカと比較すると約1/10の費用となっています。

    当院では根管治療を保険内と保険外の両方の治療を行っています。上述の通り、ラバーダム防湿は保険の点数に組み込まれていませんが、根管治療を行う上で絶対に譲れない処置であるという思いから、当院持ち出しでラバーダム防湿を行っています。保険外の根管治療であれば治療法や使用する器具、薬剤に制限がなく、マイクロスコープを用いた精密歯科治療を行うことができます。いずれの方法にしても、我々ができる治療を精一杯行うことに変わりはありません。

    ラバーダム防湿に関する論文では、根管治療を行う際にラバーダム防湿をしなかった方が抜歯になる確率が高くなることも報告されています。ラバーダム防湿法は治療をサポートする大変重要な処置になりますので、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

    執筆者情報

    院長・理事長・歯科医師

    Igari Hiroaki

    お口の健康は全身の健康と密接に関わっています。歯科は他の診療科と違い、自然治癒はほぼありません。歯科治療のほとんどが置換医療になるため、予防が何より大切です。当院では、患者さん一人ひとりがお口の健康を取り戻すために必要な問題点を共有し、治療や予防に取り組んでおります。

    「歯を残す歯周治療」、「歯を生かす矯正治療」、「失った歯を代替するインプラント」を3本の柱として、過不足のない包括的な歯科治療を行ってまいります。

    治療や予防を通して、患者さんのQOL(生活の質)向上のお役に立てると幸いです。

    経歴

    • 1988年
      福島県立磐城高等学校 卒業
    • 1996年
      東北大学歯学部 卒業
    • 2003年
      いがり歯科医院開業

    所属学会・資格・役職等

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