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    歯周組織再生療法とは?

    歯周組織再生療法とは?

    歯周組織再生療法は、歯を支える骨や歯肉を回復させることで、歯周病の進行を抑え、歯が機能できるように温存させる治療法です。

    歯周病になった歯周組織(歯を支える骨、歯肉、歯と骨をつなぐ歯根膜、歯根の表面にあるセメント質のことをいいます。)に対して、歯周病菌の固まり(プラーク)や歯石を除去すると、炎症が改善し、歯肉が引き締まり、歯周ポケットが浅くなってきます。しかし、歯周病菌によって失われた支持組織が回復したわけではありません。

    一般的に歯周治療は、歯周病が完治しても歯周病の影響で歯肉が退縮してしまっているため、歯が長く見えたり、神経がある場合は知覚過敏が生じるなどの欠点もありました。歯周組織再生療法は歯の支持組織全体を再生させるため、歯肉が下がりにくく、審美的な回復効果もあります。

    <歯周組織再生療法のメリット>

    ・歯周病によって失われた歯周組織(歯槽骨や歯根膜など)を再生させることで、

    歯周ポケットが改善し、プラークや歯石が付きにくくなる。

    ・歯周病の進行を抑え、再発のリスクを下げることができる。

    <歯周組織再生療法の留意事項>

    ・全体的に下がっている骨は再生できない。

    ・吸収したすべての骨が戻るわけではない。

    ・治療後のメインテナンスを怠ると元の状態に戻ってしまう場合がある。

    ・糖尿病や骨粗しょう症などの方には適用できない。

    ・喫煙している方は効果が得られず適用できない

    <歯周組織再生療法の適応症は?>

    歯周組織再生療法の適応症は、歯を支えている骨の形によって決まります

    適応:骨が垂直的に吸収していて、周りに骨の壁が残っている場合。

    適応外:骨が水平的に吸収している場合。

    *水平性の吸収は骨を上部に増やすことはできません。

    歯科用顕微鏡の応用

    現在、歯周治療においても、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いて、体に負担をかけない“低侵襲な治療(ミニマムインターベーション)”を行えるようになりました。マイクロスコープを用いる事により肉眼で治療するのに比べ、約10~20倍の拡大率で治療を行う事ができるため、歯科治療の精度が格段に上がりました。また、

    術後の腫れや痛みが少なく、患者さんにとっても侵襲が少なく、歯にやさしい治療方法が行うことが可能です。これまでは抜歯するしかなかった歯も、マイクロスコープを用いた治療により、残せる場合もあります。

    <治療を受ける前の留意事項>

    歯周組織再生療法によって、健康な歯周組織を取り戻すには、半年から1年程度の期間が必要になります。

    また、歯周組織が再生する期間や程度は個人差があり、歯周病の進行具合によっても異なります。

    治療効果を発揮するためには、下記の点をご理解ください。

    ・歯周病は細菌による感染症であることへの理解

    ・自宅での正しいプラークコントロールの実践

    ・歯科医院でのメインテナンスの継続

    ・非喫煙者であること

    歯周組織再生療法で行われる主な治療

    1) 骨移植術

    骨移植術は,骨が吸収した部分を補填することで、骨再生により歯周組織の安定や歯の支持を強化し、審美   性の確保など を目的として行われます。移植材としては、自家骨、他家骨、異種骨、人工骨などが挙げられ  ます。当院では骨移植材として,自家骨、異種骨、人工骨を使用しています。(保険適用外の治療になります。)

      2) EMD(エナメルマトリックスタンパク質:エムドゲイン)の応用

     エナメルマトリッ クスタンパク質(EMD)を主成分とする再生材料を適応することで,歯根の表面にセメント質を誘導し,歯周組織の再生をはかる手術法です。(保険適用外の治療になります。)

    3) 塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2:リグロス)製剤 を応用した手術法

      歯周組織欠損部へ FGF-2 製剤を局所投与することで歯周組織再生を誘導する手術 法です。 FGF-2 投与により歯周組織幹細胞の増殖・遊走が促進し、血管新生が誘導され,早期に歯周組織が改善さされる環境が整うことで歯周組織再生が促進されると考えられています。(単体で使用した場合、保険が適用されます。)

    歯周組織再生療法を行うためには、その適用を含め、事前の診査・診断が重要です。また、患者さん自身が歯周病の状態を理解し、改善するために一緒に歯周病治療に取り組まれるモチベーションも大切になってきます。歯周組織再生療法が適用となる歯がある場合には、詳しく説明させていただいております。ご不明な点がございましたら、遠慮なくお申し付け下さい。

    執筆者情報

    院長・理事長・歯科医師

    Igari Hiroaki

    お口の健康は全身の健康と密接に関わっています。歯科は他の診療科と違い、自然治癒はほぼありません。歯科治療のほとんどが置換医療になるため、予防が何より大切です。当院では、患者さん一人ひとりがお口の健康を取り戻すために必要な問題点を共有し、治療や予防に取り組んでおります。

    「歯を残す歯周治療」、「歯を生かす矯正治療」、「失った歯を代替するインプラント」を3本の柱として、過不足のない包括的な歯科治療を行ってまいります。

    治療や予防を通して、患者さんのQOL(生活の質)向上のお役に立てると幸いです。

    経歴

    • 1988年
      福島県立磐城高等学校 卒業
    • 1996年
      東北大学歯学部 卒業
    • 2003年
      いがり歯科医院開業

    所属学会・資格・役職等

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